ギャー!!!

「で、でも、俺様だって強くなったのだ!」
「ふぅん。パンチを僕に片手で受け止められる君が?」




                   どすん。  ばたん。



            どかっ。


                            ごんごんごんごんごんっどか。







「犯〜ら〜れ〜て〜たまるかなのだ――っ!!!」


         どすっ。

「ぐはっ…。お、おかしい…。いつもみたいに手篭めに出来るはずなのに…っ!!」
「それだけ俺様の薬が効いてるってことなのだ!!」
 バイキンマンはへへんとふんぞり返った。


「…今日は何もしないでいてあげるよ。」
 渋々といった感じで、アンパンマンは肩をすくめた。
「お、俺様も今日のところは手を引くのだ」
 縄が解けてアンパンマンが自由になった今、この状況から襲って犯すのは少々どころかカナリ無理がある。




「今日はついてないなぁ〜」
 アンパンマンがうらめしそうな顔をしてベッドに腰掛けた。
「ふんっ。女の子に囲まれてニヤニヤしてるからこんなことになるのだ!!」
 昼間のことを思いだしたバイキンマンのちょっとした嫉妬心。
 だけどアンパンマンはいつもみたいにするりとかわすことなく
「…好きでやってるわけじゃないよ」
 ぼそりとそんなことを呟いた。
「アンパンマン…?」
 バイキンマンはびっくりしてベッドの縁に手をついて、アンパンマンの顔を覗き込む。
「いや、なんでもないよ…」
 バイキンマンが顔を覗き込んでいるのに気づき、アンパンマンは取り繕うように笑ってみせた。
「嫌なのか?」
 悲しそうな顔をするアンパンマンの前に、バイキンマンは目線を合わせるようにちょこんと座る。
 そんな顔しないでって、悲しい顔しないでって、言おうとしたけど、うまく言えなかった。
「…バイキンマンっ?」
 気がついたら、バイキンマンはアンパンマンを抱きしめていた。
いつもは身長差のせいでバイキンマンはアンパンマンの腕の中にすっぽり収まってしまうのだけど、
おっきくなったバイキンマンはアンパンマンを充分に抱きしめてあげることが出来た。
 気が弱いアンパンマンは、いつもよりずっとずっと人間らしく見えた。
 だから、バイキンマンはほっとけなかったのだ。

でも。
 アンパンマンはヒーローなんだから。
誰にだって優しいヒーロー。
カッコよくてみんなが憧れるヒーローなんだから。
 だからそんな顔したら嫌なのだ
「みんな、アンパンマンが好きなのだ。それはいいことなのだ」

「じゃあ、君は僕のことが好き…?」
 アンパンマンが、縋り付くようにバイキンマンの背へと手を伸ばす。


「それは……」
 「好き」なんて言えないじゃないか。だってバイキンマンはアンパンマンの敵なんだから。
 バイキンマンが悩んで口ごもっていると


「あはははは!!捕まえた〜♪」
「うごっ。騙したな!!くそアンパン!!!」



        ごすっ。



 鈍い音が再度聞こえた。







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