脱衣デスマッチ
『愛してるよ、バイキンマン』
アンパンマンの手がバイキンマンの体を這っている。
暖かくて優しくて、でもなんだかいけないことをされてるみたいで…
『あっあっ…アンパンマン、ダメ…』
バイキンマンは、必死にその手を押しのける。
だけど覆いかぶさってくる体は大きくて、強くて、バイキンマンはしっかりと捉えられてしまった。
『お嫁にきなよ…バイキンマン』
『んっ…』
アンパンマンが、バイキンマンにキスをする。舌を入れるディープキス。それと同時にバイキンマンのそこへ手がかかった。
『あっ!だめっ――』
アンパンマンはくすっと笑って、バイキンマンを絶頂へと導いた。
「……なんだ今の夢」
バイキンマンは、最悪の寝覚めのせいでげっそりとしていた。
軽い頭痛のする頭を抱えて、もう一度ベットに潜り込む。
その時、自分の下半身の違和感に初めて気がついた。
「…うそ」
愕然として、ズボンの中をこわごわ覗き込む。
「…っ。うわぁっ」
思わず赤面して、顔面を枕に押し付ける。
あいかわらず違和感のある下半身が、その事が現実だと物語っていた。
「…サイアク」
くすん。と泣きそうになってから、ベッドから這い出して洋服タンスのところへ行き、新しいパジャマと下着に着替える
。穿いていた方のズボンと下着は、視界に入れずに洗濯機へ直行だ。
ムセイ…をした。
初めてムセイをした。
それも、一番大嫌いなアイツの夢で。
「あっ…アイツがあんなことするからっ。俺様は、別に何も…」
言い訳がましく独り言を呟いて、急にむなしくなってベッドへ戻る。
どうでもいいが、バイキンマンが二度目に見た夢は凶悪面した食パンマンがドキンちゃんを襲っている夢だった。
「だめ――!!ドキンちゃん逃げろー!!」
「うるさいバイキンマン!!!」
目を覚ましたドキンちゃんに蹴られた。
「おはよ〜。バイキンマン」
朝、台所で朝食の準備をしていたバイキンマンに、背後から妙に機嫌が良くて甘い声がする。
「おわっ。ドキンちゃん…おはよう」
昨日怒られたので、今朝もきっとご機嫌ナナメでバイキンマンのことをなじるだろうと想像していたのだが、その予想は嬉しい形で大きく外れた。
「ね〜ぇ、バイキンマン。今日一緒に出かけない?」
「えっ…」
あまりのことに、バイキンマンは言葉を失う。
何、もう一度言って。なんて言ったの?
「一緒に出かけようって言ったのよ」
ドキンちゃんは可愛らしく上目遣いで目をぱちくりさせてみる。
あぁ、可愛い。なんて可愛い。
バイキンマンはぶんぶん首を立てに振って頷いていた。
「行く!行くよ!」
「そう、良かった…」
ドキンちゃんは、笑顔を少しひっこめてバイキンマンの様子を観察する。
手放しで喜んでいる単純脳細胞のバイキンマン。
ちょうどスクランブルエッグが出来たところで一旦会話は途切れ、朝食を咀嚼する音とフォークが皿にかちゃかちゃと当たる音が静かな朝に訪れた。
「そう…バイキンマン、服装のことなんだけど」
「え?」
「その服はやめてくれない?」
「…え、どうして?」
バイキンマンはびっくりして、自分の姿を見回す。
今日は白の長袖カッターシャツとジーパン。
確かにお洒落とは言えないが、そんなに変な格好でもない。
とバイキンマンは思うのだが。
「ちょっと、清楚すぎるっていうか、悪役らしくないのよねー」
「あくやく?」
どうしてそんなこと言うの?怪訝な顔をしてドキンちゃんに尋ねようとしたが、ドキンちゃんの滅多に見せない満面の笑みにそれすらもどこかに追いやられてしまう。
「いつものコス着てよ」
コスって言わないで欲しい…とバイキンマンは思ったが、そこは好きな女の子の言うことだ。受け流した。
「でも、洗濯してて今無いよ」
「なんですって!?」
突然、がしゃんっと音を立ててテーブルを叩くドキンちゃん。
しかし、バイキンマンの怯えたような顔を見て
「あ、そう。…じゃあ、黒い服着ていって」
また完全な笑みを浮かべてそう言い放った。
黒のトレーナーとジーパン。
あ、これアンパンマンの家に行ったときの服。
そう気づいたとき、絶対着替えようと思ったのだが
「バイキンマンそれ可愛い〜」
ドキンちゃんに褒められたので、なんだか癪だけれどそれで城を出た。
「ねぇ、ドキンちゃん。どこに行くの?」
「ふっふっふ〜。ついてからのお楽しみよ」
そう可愛い含み笑いをするドキンちゃん。
そっか〜。お楽しみかぁ〜。
バイキンマンはにこにこ笑ってドキンちゃんの後をついて行く。
行く先はどうやら町のほうだった。
あんまり町の方には行きたくないんだけどなぁ…。
バイキンマンは密かに胸中で呟いたが、ドキンちゃんの手前そんなことを言えるわけがない。
やっぱり子犬みたいについていった。
「な、な、なにこれ――!!!」
『アンパンマンVSバイキンマン 〜野外 デスマッチ〜』
目の玉が一メートルは飛ぶくらいに驚愕するバイキンマン。
すると彼の目の前でびゅぉぅっと強い風が吹いて、空白のはずの部分に貼られていた紙が吹き飛ばされて飛んでいく。
『アンパンマンVSバイキンマン 〜野外脱衣デスマッチ〜』
「ぎゃぁぁぁぁ―――っっっ」
野外、脱衣、デスマッチ―――!!!???
どうして―――!!??
「うふふ…ごめんねバイキンマン。私、食パンマン様のお願いだったから断れなかったのぉ。頑張って脱がされてきて」
パチン☆とウインクをするドキンちゃん。
そんな彼女の愛らしい笑顔も今のバイキンマンにとっては何も有難くなかった。
「いやだよ!いやっいや!絶対やらない!」
「あ、バイキンマンこんな所にいたんだ」
「ぎゃぁぁぁぁ――!!アンパンマンっっ」
なんだよ、失礼な奴だな君は。アンパンマンは片方の眉を吊り上げてバイキンマンを見下ろす。
バイキンマンは身の危険を感じてじりじりと後ずさった。
けれど、にゅっと伸びてきた長い腕にあっさりと捕まえられ、まるで猫か何かのように首根っこを掴まれ持ち上げられる。
「はいはい、お客さんが待ってるから早くリングに上がろうねー」
「いやっいやぁぁ。ドキンちゃん助けてぇぇ!!!」
「アデュー。バイキンマン。健闘を祈ってるわん」
「鬼――っ!悪魔――っ!」
バイキンマンの絶叫も空しく、事は着々と進んでいった。
「『第一回 アンパンマンVSバイキンマン 〜野外デスマッチ〜』の幕開けです!司会兼実況中継をさせて頂くのは、私、バタコであります!みなさん盛り上がってますかーっ?」
いえーっ!! 青空の下、広場に沢山の人が集まっている。
「ノリノリですね〜。さて、今回の夢の企画について解説させて頂きます。えー、毎回バイキンマンが機械と共にやってきて、適当に暴れて結局最後はアンパンマンにアンパンチされてぶっとんでいくというストーリーに飽きたという意見が多数寄せられましてですねー。いっそのこと生で戦わせたら面白いのではないかというジャムおじさんの提案により、幾度となく検討され、今日実現したという次第であります!」
いえーっ!!
「しかもバイキンマンは悪役のくせに自分は戦わないということに対してもクレームが…。あ、毎回自然破壊をするな?あぁ、はいはいそうでした。と、いうことで今日はバイキンマンに痛い目に合ってもらいます!」
おぉー! やーれ! やーれ! やーれ!
「ひぃっ。シュプレヒコールが!!!」
バイキンマンは会場の異常な興奮に、呆然となる。
その時、空からアンパンマンが飛んでリングの上に着地をした。
さっきから姿が見えないと思っていたら、そんな演出をしようとしていたのか…。
バイキンマンはどうでもいい所にあきれてしまう。
しかし、そのヒーローの登場によって、会場の温度は瞬時に沸点にまで達した。ものすごい盛り上がりようである。
平和な町に住んでいる人々はそんなに娯楽に餓えているのだろうか…。
「さぁて、始めようか。バイキンマン」
…はっ!そうだった。バイキンマンは彼の声によって一気に現実へと引き戻される。
今、気にすべきことは自分の身を守ることではないか。
「頭脳派というか、腕っ節がひたすら弱い君が肉弾戦プロの僕にどうあがいて応戦するのかが醍醐味だからね」
にやりとどう見ても正義の味方に見えない笑みを浮かべ、アンパンマンは見せかけだけのファイティングポーズを取る。
「…いい声で啼(な)いてくれよ」
バイキンマンの顔がみるみるうちに強張って血の気がひいていった。
「いぃぃ――っ。いたいいたいいたいぃぃぃ〜〜!!」
逆エビ固めをされて手足をじたばたさせているバイキンマン。
アンパンマンはただくすくす冷徹に笑って楽しんでいた。
「僕のプロポーズを断った罰だよ」
「…なっ!?…ぁっ。いやぁぁ――っ!」
まるでヤっている最中のような悲鳴。
その色香に満ちた声を聞いているのは心地よいものだったが、こうも公衆の面前で披露されると、アンパンマンとしては面白くない。
「も、もうムリ!ムリだよ!!キブ――!!ギブアップ!」
バイキンマンは精一杯声を振り絞り、負けを認める。初めから勝ち目なんてなかったのだ。
バイキンマンは自分がプライドを捨てて負けを認めれば全てが終わると勘違いしていた。
…それは甘かった。
「却下。あそこの看板にでかでかと『デスマッチ』って書かれてるのが分からないの?」
くつり、と笑って征服者の笑みを浮かべる正義のヒーロー。
BGMとして流れているのはZARDの「負けないで」だ。
負けてる奴に「負けないで」なんか聞かせるなぁ!
バイキンマンは泣きたくなったが、泣いて誰かが助けてくれるわけでもない上に、いつもみんなを助けてくれる正義の味方に襲われているのだ。
「もぉ…いやぁ…」
掠れた声で懇願するバイキンマン。
「正直に『お嫁に来ます』って言ってくれれば即やめてあげるのに」
アンパンマンは呆れたようすでぎりぎりとバイキンマンの体を締め上げる。
その、頂点に立って偉ぶった態度がバイキンマンの最後の抵抗心を蘇らせた。
「…は!誰がそんなこと」
「あっそ。じゃあ」
さそり固め。
裏十字固め。
フェースロック。
ラリアットを食らわせてからジャーマン・スープレックス・ホールドでフィニッシュ!
バイキンマンは悲鳴と絶叫を絶え間なくあげながら、気を失いかけた。
「…え?」
が、突然自分の衣服に伸びてきた冷たい手にびくりと体を震わす。
「ま、まさか…」
バイキンマンの怯える顔をむしろ楽しんでいるようにアンパンマンはくすくす笑う。
「悪者は正義の味方によって無様な最期を迎えないとギャラリーは満足しないでしょ?」
つまり、それが意味していることは。
バイキンマンの目の前が真っ暗になった。
そうだ、初めからそうだった。
バイキンマンがプロレスで負けても、それは力量の差。バイキンマンは機械を使って悪さをするから、あまり屈辱にならない。
だから、最も恥辱なことをして悪者を辱めるのが彼らのルールだ。
そのやり方がどんなに残虐でも、陵辱的でも、しているのが正義の味方でされているのが悪者ならば、犯罪にはならない。
ただの「制裁」だ。
仕方ない。世の中はこんなだ。
「…っく…っひっ…」
バイキンマンは泣き出してしまった。
ぺたりとリングの上にへたばって、恥も外聞なくしくしくと泣き出す。
アンパンマンはそれを見て、きっと許しを請うてくるのだろうと予想し、変わりの条件をどうしようか、とかどうやって虐めようなどと考えていたのだが。
だけど。
「…それで…みんな満足する?終わりになる?」
バイキンマンが口にした言葉はあまりに予想と違っていて。
驚いてバイキンマンの顔を覗くと、そこには何の表情も映し出されていなかった。
ガラスのような、透明な表情。
…ある種の征服欲を駆り立てる顔。
きっとバイキンマンはこの戦いというより虐待の場をとっとと去りたいのだろう。
でも、そうはさせない。
何故なら、バイキンマンはアンパンマンのものだから。バイキンマンの思う通りにはさせない。
「あぁ…そうだよ」
アンパンマンが意地悪そうに笑い、バイキンマンが身を強張らせるのが分かった。
「…アンパンーチ」
ぽこっ。アンパンマンの緩く握られた拳がバイキンマンの額を小突く。
「…ふぇ?」
「ばっか。そんなことするわけないだろ」
そう言って、正義の味方はバイキンマンの腕を掴んで無理やり立たせる。
「バイキンマンの裸を見れるのは僕だけなんだから」
「なっ…」
耳元で熱っぽく呟かれて、バイキンマンは耳を赤くさせた。
「ほら、捨てセリフ!」
「…へ?あ、あっ」
アンパンマンの行動を理解できなかったけれど、この場から逃げ出せるらしいということは察知できた。
「…きょ、今日はこの位で勘弁してやるっ!バイバイキーン」
泣き声でそんなこと言っても、まるっきり威勢は無かったけれど。
そのまま、会場が唖然としている間にリングから下りて、人を掻き分けただ突っ走る。
背後でブーイングが起こっているのが聞こえた。
「はぁ…ここまで来れば、もう」
バイキンマンは人里離れた森まで来ていた。ただやみくもに走ったので自分の城の方角は分からない。
「いったぁ…」
ほっと一息つくと、急に全身が痛みを訴えてきた。アンパンマンにこてんぱんにやられたせいだ。
「…っ!なんだよ、アイツ!!」
かっと全身に怒りがこみ上げてくる。
自分を愛してるとか言ったくせに。
お嫁に来いとまで言ったくせに。
どうして本気であんな酷いことをするんだろう…アンパンマンの愛してるは「好き」という意味じゃないのだろうか。
「まぁ、俺様あんな奴好きじゃないからいいけど」
「誰のことを好きじゃないって?」
「はぅっ!?」
驚いて飛び上がると、茂みの中から正義のヒーロー、みんなの味方が登場してきた。
「なん」
でお前はそう神出鬼没で俺様の行くところ行くところに現れるんだ!
その言葉は、アンパンマンの唇によっと封じ込められる。
「ふっ…ぅぅ!」
じたばたともがいてみせるが、その抵抗は次第に弱まっていき…。
「どうしたんだい?今は素直だね…」
素直じゃなくて、体力がないだけだ!そう言う気力もなくて、バイキンマンは押し黙る。
「……あ、そうそう。怪我してると思って」
誰のせいだ!そう怒鳴りたかったが、もう何をする気力も萎えていた。
今はただひたすら体中が痛い。
「はい」
そう言って手渡されたのは。全身の擦り傷打撲に絆創膏、一枚?
「…」
「どうしたんだい?」
…馬鹿にしてるのか?バイキンマンは理解に苦しんだが、アンパンマンの心底不思議そうな顔を見て、どうやら本気だと解釈する。
それを力の入らない指先で受け取った。すると、アンパンマンは目を丸くして大声で笑いはじめた。
「あはは!やっぱり君は馬鹿だよバイキンマン。自分の怪我の具合も分からないの?」
「なっ…」
どっちが!そう言いかけて、草むらに押し倒される。
あっと思ったときにはもうアンパンマンに組み敷かれて、自分は下からアンパンマンを見上げる体勢になっていた。
「治療しないと」
「い、いやだ!」
「君、痛いって言わないって言ったくせに、今日連発してたよね」
「…それはっ」
「…だから、僕が助けてあげる。君を守るのは僕しかいないから」
「――っ。俺様はお前に一方的にボコられたんですけど!!!」
「責任取るよ」
そう言って微笑むアンパンマンは、とても優しそうで。
顔は相変わらず嫌味なほど整っていて、長い腕はバイキンマンをきつく抱きしめた。
強く抱きしめられると、打ち身のところがずきんと痛んだけれど、バイキンマンはそれを拒めなかった。
「愛してるよバイキンマン」
そうささやかれる愛の睦言。
…しかしこれが愛する者に対する態度だろうか。
ぐぃっと胸の突起が見えるところまで服をたくし上げ、挙句に口に咥えさせるという痴態を強要するアンパンマン。
「うーっ!うぅーっ!」
両手首はアンパンマンのポケットから(何故か)出てきた縄によって縛られ…。
アンパンマンが持ってきた救急箱には消毒液やら軟膏など、普通の薬も入っていたが、明らかに違うものもわんさか入っていて。
バイキンマンは恐怖に顔を引きつらせた。
だけど、自分を見下ろしている彼はますます楽しんでいるようで、早速いただきますとばかりにバイキンマンのジーパンに手を伸ばす。
そしてバイキンマンが羞恥を感じる前にチャックを下ろして下着もろとも取り払ってしまった。
ただの治療じゃなかったのか?!
そう叫びたかったが、言いつけを守らなかったときのアンパンマンの仕打ちが怖くて喉の奥で引きつった声しか出せない。
アンパンマンは、バイキンマンが大人しいのをいいことに指にたっぷりジェルをつけ、バイキンマンの蕾へと進ませていく。
「んっ。んー!!」
いやいやをするように首を振るが、指は焦らすように入り口を数回つつき、ツプンという音をさせて、一本目は容赦なくバイキンマンの中に進入した。
「うっ…う、うぅっー!」
「あぁ、やっぱり二回目でもキツイね、バイキンマンの中。きゅうきゅう締め付けてくる。でも暖かくて柔らかくてすごく具合は良いよ…」
うっとりと、感触を楽しむように、ぐるりと中で指を一回転させるアンパンマン。
バイキンマンは背中を反らせて身を捩った。
強烈な異物感と圧迫感、そして不快感がバイキンマンを襲う。
「ここが良いんだよね。ここ…」
けれど、あっさりとバイキンマンのイイトコロを見つけたアンパンマンは執拗にそこばかり攻め立てた。
指を二本に増やし、中を抉るように刺激したり、指をくの字に曲げて引っかいてみたり、はたまた一度ギリギリの所まで引き抜いてから一気に奥まで挿入したり。
「うっ…ふぅっ…んっ…うぅ…」
バイキンマンはぽろぽろ涙を流しながらそれに耐えていた。
快感と心地悪さで奥歯が噛みあわなくなり、服を咥えていた歯がガチガチと鳴る。
するとアンパンマンは置き去りにされたままの胸の突起にふと目をやり、
「…いやらしく勃ってるね」
バイキンマンでさえ気づいている残酷な事実をわざわざ言葉に出してバイキンマンを攻めた。
中に入れた指は動かしたままで、片方の指で突起にいじり始める。
舌でもう片方の突起を舐めたり軽く歯を立てたりもした。
「バイキンマンの病気は治りそうもないね…淫乱病」
そのまま中に入れる指を三本に増やそうとしたとき
「…あっ。もう、やめて!」
バイキンマンはそう叫んでしまっていた。
すでに限界だった。
苦痛を伴う快楽のせいで、バイキンマンのそれは蜜を溢れさせて開放を願っている。
しかしアンパンマンは嬉しそうに
「あ、咥えててって言ったのに落としたね」
そう言い放ったのだった。
しまった。
バイキンマンはそう思ったが時すでに遅し。
罰だよ。そう言ってアンパンマンは救急箱から何かを取り出してきた。
「…なにっ」
バイキンマンの目にうつる、ピンクの先端が丸い…
「ローターって言うんだけど、知ってる?」
知っているわけがない。
バイキンマンは涙を零しながら謝った。が、アンパンマンは許してはくれず、バイキンマンの足を持ち上げて彼の秘部をあらわにしてみせる。
「あっ…いやぁっ!」
「ジェルでぐちょぐちょ…いやらしいね」
そのまま、窪みに当ててぐいっと押し込む。
あまり大きくはなかったため、塗らされて解されたバイキンマンのソコは柔軟にローターを飲み込んだ。
「あっいっ、いやっ…な、なに」
「えーと、ここらへんかな」
ぐりぐりと長い指が遠慮なくローターを押し込んでいく。
ある場所に達したとき、アンパンマンは満足そうに笑って指を抜いた。そしてそのローターに、リモコンで命令を下す。
「…ひっいっ…あっ!あぁぁ――っ!」
バイキンマンの中で、ローターがぶるぶると振動を始めた。
「やぁっいやぁぁ―――!!やめて!やめてぇ――!」
バイキンマンはがくがくと体を痙攣させながら、アンパンマンに助けを求める。
しかしアンパンマンは残忍な笑みを浮かべながら、バイキンマンの前の方に手を伸ばした。
「こんなに溢れさせて…ダメだねバイキンマンは」
ぎゅっと握りこまれて、バイキンマンは甲高い悲鳴を上げる。
アンパンマンはそのまま、バイキンマンに軽くキスをした。
手は乱暴にバイキンマンのそこを握りこんだまま。
「僕を思って何回した?バイキンマン…」
「ひぃ…ぁ、…やぁぁっ…離して!離してぇ!」
「答えてよ。…ねぇバイキンマン、僕のこと、好き?」
アンパンマンが優しくそう問いかけても、バイキンマンはただ泣き叫ぶばかりだ。
時折潤んだ瞳に恐怖と羞恥を滲ませて、残虐な行為からの開放を懇願するようにアンパンマンを見ている。
「…好きって言えよ」
アンパンマンは、自分のズボンの前をはだけた。
一瞬だけ、苦痛から逃れたバイキンマンは荒い息をついてぐったりとしている。
もう終わりなのかと思った。もうこれで拷問から逃れられるのかと思っていた。
「痛いって言えよ、バイキンマン」
もう一度、足を大きく開かされる。
「――――っ!!!」
喉を切り裂くような悲鳴がした。
アンパンマンの怒涛のそれがバイキンマンを貫いた。
ズン、という音が体の中でして、ローターがさらに奥へとやってくる。
「――ぃっ、あぅっ、あっ、あっ!」
「助けてって言えよ。そうしたら僕だって」
少し上にずり上がったバイキンマンの体を抱きこみ、完全に根元までソコに食べさせる。
「…愛してるって言えよ」
何か言いたげな瞳で見上げてくるバイキンマンの肩を掴み、アンパンマンはそう呟いた。
「お願い、…もう…無理…あ、あ、あぁぁぁぁ!」
太くて大きいモノが、バイキンマンの奥を突き上げて、イイ所を抉ってバイキンマンを壊していく。
悲鳴を上げてもそれはキスで塞がれ、おまけに舌を吸われて思考回路が鈍っていく。
すでに抵抗の意思をなくした腕は縄から開放されたが、近くの草を掻き毟るだけで何にもならなかった。
「あっ…ア、!」
自分を犯してる奴の名前を呼ぼうとしたが、ガクガクと揺さぶられそれすらも出来ない。
「あっ、んっ…あぁぁっーっ!」
アンパンマンの動きが早くなって、バイキンマンは体内に熱いものが注がれてくるのが分かった。
これがアンパンマンのだと気づくと、バイキンマンは言い知れない羞恥を感じる。
…体内に、出された。
初めて犯されたときに、きっと全ては変わってしまったんだろうけど。
こんな風に生々しく感じるとは思っていなかった。
それでもアンパンマンは、一回ではまだまだ満足でないというように、またバイキンマンを突き上げはじめる。
「あっ…アンパンマン…?あっ…やぁっ…」
バイキンマンの中に注がれた液がアンパンマンが腰を動かすたびじゅぶじゅぶ音を立てて外に掻き出される。
アンパンマンはもう何も言わないで、冷たい瞳のままバイキンマンを犯し続けていた。
だけど。
(アンパンマン…?)
その瞳がなんだか泣きそうで、悲しそうで。バイキンマンは朦朧とした意識の中、アンパンマンに指先伸ばした。
震えて難しかったけれど、バイキンマンの指先はアンパンマンの頬へと触れる。
だがアンパンマンはそれに気づいたのか気づいていないのか、ただ快楽を貪る行為にのみ徹していた。
(アンパンマン…俺様は…)
バイキンマンの心の中に生まれた微かに変化。
しかし、それは言葉として形づく前に、バイキンマンの意識は暗い闇へと堕ちていった。
「…ぁ」
優しく撫で擦られる肩。鈍く痛む下半身と軋む関節。
「あぁ…気づいたんだね」
頭の上から声がして、頬を撫ぜられる。
「…アンパンマン?」
視界と感覚がはっきりしてくると、バイキンマンはどうやら自分はアンパンマンの膝枕で寝ているらしいことが分かった。
「やっぱり、無理させすぎたかな」
そう苦笑する彼。バイキンマンが鈍痛に耐えながら起き上がろうとすると、手の甲に湿布が貼ってあるのが見えた。
「え?」
それだけではなく、体中の怪我をしたと思われるところには然るべき処置が施されている。着衣までも。
「ごめんね…」
きょとんとしているバイキンマンに、アンパンマンが謝った。
バイキンマンはどんな顔をしていいのか分からず、ただアンパンマンの顔を見つめる。
「アンパンマン…?」
アンパンマンもバイキンマンを見つめていた。
「あぁ…バイキンマン、君は可愛いね」
「なっ!?」
「大好きだよ、バイキンマン。君の可愛い顔も強情な性格も。本当は気が弱くて泣き虫で、とても寂しがり屋なところも」
女の子なら一発で惚れてしまう顔でそんなことを言う。だけど、その表情はなんだか辛そうで…。
「アンパンマン…」
バイキンマンは、膝立ちでふらふらしながらもアンパンマンに抱きついた。
「バイキンマン!?」
突然の行為に驚くのは当然だろう。
「アンパンマン、俺様、やっぱり…」
散々喘がされた声は、掠れてしまっていてきっとアンパンマンにとっては心地よい声じゃないはずだ。
バイキンマンだって「変な声…」と笑ってしまうくらいに疲弊した声だったから。
でも抱きついたアンパンマンの暖かさは、バイキンマンには残酷なくらいに気持ちよかった。
「…俺様はアンパンマンを好きになっちゃいけない気がする」
顔に泣き笑いのようなものを浮かべてバイキンマンは言った。
うっすらと上気しているのは何故だろう。
「仮に、仮にだぞ!?俺様がアンパンマンを好きになったら…みんな困るだろうし、敵が敵じゃなくなっちゃうし…だから、俺様は…」
バイキンマンの目からぽろりと一筋涙が零れた。
「…アンパンマンが嫌いだ」
そう言ってバイキンマンは笑った。心はきっと違う行為をしろと命令しているのに、理性でそれを殺して笑ってみせる。
「逃がしてくれたことは感謝する。好きとか、愛してるとかは、冗談として受け取っておくから…」
多分、初めて言ってもらえた嬉しい言葉。誰かから必要にされていると一瞬でも思うことが出来た言葉。
…でも、悪役はそれだけで十分。ねぇ?そうだろ?
「そんなっ。バイキンマン…僕は、本当に君を!」
腕を掴んできたアンパンマンの手を振り払い、バイキンマンは言った。
「じゃあな、今日はこれくらいで勘弁してやる。バ」
バイキンマンの瞳が見開かれた。アンパンマンの熱い唇がバイキンマンのそれと重なって言葉を続けられなくなる。
「んっ…ふぅ…」
長くて短い時間、バイキンマンとアンパンマンはキスをした。
バイキンマンは泣きそうな辛そうな顔でそれを受け止めていたが、はっと我に返り
「馬鹿!」
アンパンマンを殴って逃げた。
「…全然痛くないって。バイキンマン」
アンパンマンは自分の頬に手をやり、小さくなっていくバイキンマンの背中を見つめていた。
辺りはすっかり暗くなっていた。
帰り道、誰かに犯されなきゃいいけど…。アンパンマンはそう呟いた。
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