バイキンマンの逆襲
「やぁぁっ…も、やだぁ…」
「んっ!んぅ!うぁぁ――っ!!」
「あっ…はぁ、…く」
「気持ち良かった?」
あはは。と頭上から降ってくる笑い声。
くそ!バイキンマンは涙を浮かべ、胸中で叫んだ。
どーして、どーしていっっつも俺様ばっかこんな目に!???
くそー。馬鹿アンパン。今に見てろ!!
「やぁ、バイキンマン。元気かい」
バイキンマンが庭で草むしりをしていると、いきなり背後から抱きついてくる奴がいた。
「(…げ)アンパンマンっ!?」
バイキンマンが振り返ろうとすると、アンパンマンはさらに腕に力を込め、バイキンマンを束縛する。
その上首筋に唇を這わせたり、服の上からバイキンマンの…。
「やっ、やめろー!!」
バイキンマンはびくんと体を震わせて、アンパンマンの腕から逃げ出そうともがいた。
アンパンマンは苦笑して、するりと腕の力を弱める。
「もう、君は純情すぎるよ」
そう言ってバイキンマンの頬に手を寄せる。
バイキンマンは何か言い換えそうと睨んだが、結局言葉が見つからず「うぅー」としか言えなかった。
アンパンマンはなおもバイキンマンの体に触ってくる。
別に、気持ち悪いとかではないんだけど…。
バイキンマンは顔を伏せて腕をつっぱり、アンパンマンから離れようとした。
顔が熱いのを知られたくなかった。
と、その時ぴこーんとバイキンマンの頭の中にある作戦が浮かんだ。
その途端、バイキンマンはにやりと笑う。
フフ…馬鹿なアンパンマンめ。
今日こそ今までの雪辱を晴らしてやる!
バイキンマンは腕の力を抜き、アンパンマンの腕の中にすっぽり抱き込まれた。
急に大人しくなったバイキンマンに、アンパンマンは違和感を覚えてバイキンマンの顔を覗き込む。
するとバイキンマンは
「アンパンマン…今日、誰もいないんだ」
そっと、呟くようにアンパンマンにささやいた。
アンパンマンは一瞬目を見開いて、それからにっこり笑い、バイキンマンに優しい優しいキスをした。
「…別に何もないけど。お茶くらいは出してやる」
バイキンマンは、アンパンマンの目の前に湯気の立つティーカップを置いた。
お茶うけのクッキー(バイキンマンの手作り)もテーブルの真ん中に綺麗に並べられて置いてある。
「なんだか珍しいね」
「…」
アンパンマンはにこにこ笑顔で、ティーカップに口を付けた。
あっ、ブランデーが入ってる。いい香りだね。アンパンマンはますます顔をほころばせて、喜んでみせた。
(馬鹿なアンパンマンめ…)
バイキンマンはほくそえみ、しかし表は仏頂面でアンパンマンの正面の席に座っていた。
何かしゃべってボロを出すといけないので、あくまでいつものようにそっけなく、平常運転だ。
バイキンマンは、のん気にクッキーに手をつけるアンパンマンを観察していた。
正義の味方はこうも人を疑わないのだろうか。
バイキンマンはこう見えても敵なのに。
(甘く見られてるってことか…?)
バイキンマンは眉根をぎゅっと寄せた。くそ!馬鹿アンパン!
ただ、こうしてじっくり間近に見ると、やっぱりアンパンマンは格好良かった。
それが悔しかった。
「バイキンマン、ありがとう」
「へっ!?」
突然、アンパンマンがバイキンマンに向かってそういった。
不意にくらったバイキンマンは少しうろたえる。
おまけに良心も痛み出してきた。
(くそー。これだから天然は)
と、その時
ガシャン!どたん。
アンパンマンが椅子から転げ落ちた。
バイキンマンは、弾かれたように椅子から立ち上がった。
アンパンマンはうっすらと目を開けた。
頭の中の白いもやが次第に晴れて、視界がくっきりとしてくる。
(どこだ…ここ)
奇妙にデジャヴ感のある部屋だ。
けれど、自分の部屋でないことは確かだ。
「おーい、誰か、あれ!?」
起き上がろうとして、手足の自由が奪われていることに気づいたアンパンマン。
首を動かして自分の胴体を見ると、これでもか!というほどロープが何重にもかけられていた。
一度、ショートしかけたアンパンマンの思考回路だったが、気を失う直前の出来事を思い出し、なるほどと思い直す。
(バイキンマンめ…)
こーゆープレイがいいのか畜生。
もし、正反対の立場だったら亀甲縛りで本格的プレイをやってあげられるのに。
なんて皮肉めいたことを考えていると、もわもわと妄想が膨らんできた。
すると、遠くからぱたぱたと足音が聞こえてくる。
おそらくバイキンマンだろう。
まずい。なんだか知らないけどまずい。アンパンマンは少し焦った。
体を二、三度揺らしてみる。ベッドがぎしぎしと音を立てた。
ベッド?
そうか、今自分はベッドの上にいるのか。アンパンマンはぼんやりとそんなことを思った。
がちゃり。
ドアノブが回って、ドアが開いた。そこにはしかめっ面したバイキンマンが立っていた。
「やぁ、バイキンマン。これはどういうことだい?」
あくまでも、にこやかに質問するアンパンマン。
その笑顔の奥には鬼のような形相が隠れているのだが、今のところはまだ現れていない。
「ふーんだ。今日はお前に仕返しをするために城に入れたんだ!」
バイキンマンは部屋の隅からびしりと指をつきつけ、アンパンマンにそう宣告した。
「へぇ…それで僕、こんなことになってるんだ」
「そうだ!全然動けないだろう!」
「あぁ、動けないよ。全然動けない」
アンパンマンは、ふぅっとため息まじりに降参の言葉を吐き出した。
バイキンマンは一体何をしたいんだろう。
彼の行動の理解に苦しむ。
まさか本気で殺されたりはしないと思うが…。
「ほんと…?」
バイキンマンが恐る恐るアンパンマンに近づいてきた。
そして、まだしっかりロープが巻きついているのを確認してから、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「意外とちょろいな」
こいつ、一度拉致監禁して躾なおしてやろうか。
アンパンマンは笑顔のままそう強く思ったが、バイキンマンがアンパンマンの体の上ら乗っかってきたことにより、思考は中断させられた。
「形勢逆転」
バイキンマンは嬉しそうに呟き、そして、アンパンマンにキスをした。
アンパンマンの目がびっくりして見開かれる。
「へへ…どうだ。悔しいだろう。俺様にこんなことされて悔しいだろ?」
また、アンパンマンの唇に自分の唇を重ねるバイキンマン。
ちゅ、ちゅ、と音をたてて繰り返されるキス。
次第に、バイキンマンのキスは軽いものから深いものへと変わってきた。
「んっ…、んっ…。どーだっ!」
ぐい、と口元を拭ってアンパンマンを睨みつけるバイキンマン。
「…バイキンマン」
アンパンマンの少し震えた声。
バイキンマンは、それを怯えと解釈し、にんまりとした。
実際は驚きと喜びで言葉を失っただけ。
それはさておき、バイキンマンは次にどうしようかと迷っていた。
「うー…」
アンパンマンの上に跨いでのっかり、目を閉じて考え込むバイキンマン。
アンパンマンはおかしくなって挑発をした。
「何?これでおしまい?キスくらいならいつでもさせてあげるのに」
その飄々とした言葉にバイキンマンはカチンときた。
「な、なにおぅ!」
ロープの上からアンパンマンのボタンを外し、ぐいぐいと服をひっぱって胸をはだけさせる。
それから、恐る恐るといった感じでアンパンマンの肌に手を這わせはじめた。
(むー…。意外と筋肉質だな…)
アンパンマンの肌をペタペタ触りながら、バイキンマンは少し驚いていた。
アンパンマンは着痩せするタイプらしい。
バイキンマンは次に、少し躊躇しながらも手をアンパンマンのそこに這わせながら、アンパンマンの首筋にキスをした。
舌を這わせて、ちゅっと吸い付き、アンパンマンの首筋にバイキンマンの跡をつける。
「…どーだっ。困るだろう!」
ズボン越しとはいえ、手をアンパンマンの前に触るというのが恥ずかしかったのか、バイキンマンの頬はうっすら上気して、手も震えていた。
「あぁ、そうだね。すごく困るよ」
アンパンマンがそう言うと、バイキンマンは嬉しそうな顔をして、首筋や肩口に何度もキスマークをつけた。
「ふぅ…」
しばらくして、とりあえず満足そうにため息をついたバイキンマン。
沢山アンパンマンにキスをして、
キスマークをつけて、
その度にアンパンマンに「困るなぁ」とか「やめてよ」とか言わすことが出来たので、目標の半分は達成したと言っていい。
何より、アンパンマンの自由を奪えたことが嬉しかった。
バイキンマンは、それをただの独占欲だと気づいていない。
(あれ…?もう終わりかな)
アンパンマンは、自分の上に乗っかったまま次の動作に移ろうとしないバイキンマンを観察していた。
時々考えるような仕草を見せるのは、おそらく自分がされて気持ち良かった所を思い出しているのだろう。
それを先ほど気づいて苦笑した。
でも、相手を骨抜きにさせるようなテクニックはまるでなっていなくて…。
けれど、かえって幼稚なキスや愛撫がバイキンマンが一生懸命なのをあらわにしていて、アンパンマンにはじんときた。
つまり、その感動は下半身に直結しているわけで、アンパンマンの中心はそろそろ熱を帯び始めていた。
むしろ、こんなに可愛い恋人が懸命に奉仕してくれているのに、勃たない方が失礼なのだ。
「あ」
突然、バイキンマンが小さく声を上げた。次の瞬間、にまりと笑い、アンパンマンに一方的なキスをする。
「どうしたの?」
アンパンマンが訊くと、バイキンマンはにやりと子悪魔的な笑みを返し、アンパンマンのズボンのチャックを下ろした。
「あっ…」
バイキンマンの動作に驚いたアンパンマンは小さく声を上げて身を捩る。
「お前だって泣けばいいんだ」
バイキンマンはアンパンマンのズボンをどうにか腰までずらし、下着に手をかけた。
「泣く?」
その言葉の意味が分からなくて聞き返すアンパンマン。しかし、それにバイキンマンの返答は無かった。
その代わり、アンパンマンの下腹部ではっと息を呑む音が聞こえた。
「…っ」
アンパンマンのモノを見て、明らかに躊躇しているバイキンマン。
「大きくてびっくりした…?」
ごめんね。あっさりと謝るアンパンマンにバイキンマンはなんだか負けた気がして急いで怒鳴った。
「煩い!馬鹿!ふつーだ!ふ・つ・う!」
そして、アンパンマンのそれに手を添えて
(………どうしよう)
困った。すると頭の上から
「バイキンマン…無理しなくていいよ?」
アンパンマンの心配そうな声が降ってきた。
バイキンマンはそれにさらにカチンときてしまう。
お前、まだ自分の立場が分かってないみたいだな!!
縛られて襲われてるのはお前の方なのに!!
いつもいつもいつもいつも俺様ばっかり辛い目にあわせやがって!!くっそ〜!!
今までのダイジェスド版のように、アンパンマンにやられた場面がバイキンマンの頭のなかをぐるぐると駆け巡る。
余裕がなくなって泣き叫んでいるバイキンマンを許さず、さらにご丁寧に攻め立ててくれたアンパンマンを思いだし、バイキンマンはとうとう腹をくくった。
「んっ…」
「あ、ちょっとバイキンマンっ!?」
流石のアンパンマンにも、これには慌てる。が、止めるにも止められずただ呆然とバイキンマンを見ていた。
バイキンマンは子猫が舐めるように舌を使ってアンパンマンのそれを愛撫しはじめる。
とても口には入りきらないから、手を添えて指も使って懸命に愛撫をした。
「…く、バイキンマン…」
「気持ちいい…?」
そう上目遣いに訊いてくるバイキンマンの目は少し潤んでいて、ちらりと覗く赤い舌はいつも以上に艶っぽかった。
アンパンマンは一生懸命なバイキンマンを見て、胸がじんとなり「気持ちいいよ」と言ってやる。
「ははは。ざまぁみろ」
何がざまぁみろなのかはさっぱり分からないが、手放しで喜ぶバイキンマンを見てアンパンマンは可愛いなぁと思った。
「さて」
「…む?」
いきなり、アンパンマンが話の途中で話を変えるような口調になった。
バイキンマンはアンパンマンの先端を口に含んだまま、アンパンマンの方を見上げる
アンパンマンと目が合うと、アンパンマンはにへら〜っと笑ってバイキンマンの頬を撫ぜた。アンパンマンのそれがドクンと脈打ったのが分かった。
「バイキンマン可愛いよ。可愛すぎる」
「…!?お、おい!アンパンマン!!お前…ロープはっ!??」
当たり前のように両手を使うアンパンマンを見て、バイキンマンは愕然とした。
アンパンマンは、それが何か?といった感じでバイキンマンを力まかせに抱き寄せる。
バイキンマンは混乱した。
「あんな適当に巻きつけただけのロープなんて、誰だってすぐに解けるよ。亀甲しばり教えてあげようか?」
な、なななな何いって!うろたえるバイキンマンを尻目に、アンパンマンはバイキンマンの服をぐいっとたくし上げる。
バイキンマンは次に行われるであろうことに戦慄し、びくりと体を震わせた。
アンパンマンにこんなことしてただで済ませるわけがない。
復讐なんて思いつかなければ良かった。
「ご、ごめんなさい!」
謝っても十分遅いし、謝ったくらいでは許してくれる相手じゃないということは重々承知の上だ。酷いことをされるのは目に見えている。
バイキンマンの目にじわりと涙が滲んだ。
しかし、アンパンマンはくすりと笑って
「こんなプレイもたまにはいいけど、バイキンマンを抱きしめられないっていうのが難点だね」
そう言って、涙ぐんだバイキンマンにふわりとキスを落とした。バイキンマンはぽかんとしてアンパンマンを見上げた。
が、はっと我に返り少し憮然として
「別にそれでいい。抱きしめなくていい。アンパンマンが逃げられなかったらいいんだ」
と言った。
バイキンマンがぽろっと言ったその言葉が意味することを、アンパンマンは理解できた。
たとえバイキンマン自身が分かっていなくても。
アンパンマンは、目一杯バイキンマンを抱きしめてから、
「バイキンマンが頑張って僕を気持ちよくさせてくれたから、今日は僕も頑張らないとね」
やけにキラキラした目でそう言った。
バイキンマンの血の気がさっと引く。
「やっぱりするのか!?」バイキンマンが恐れおののきながら訊ねると、「もちろん!」さわやかにそう返された。
「いや、俺様遠慮しとく…ひあぁっ」
アンパンマンがバイキンマンの前を掴んだ。そして耳元で誘惑するようにささやく。
「絶対に痛くしないから」
それでもバイキンマンは腕をつっぱって、いやいやをする。
まったく…。アンパンマンはため息をついた。
バイキンマンとの関係はどうしても、「理由」が必要になってくる。
お仕置き、制裁、アンパンマンが世間にいい訳できるように。
けれどそれはバイキンマンがアンパンマンを「愛していない」理由にもなるからで、つまりは意地っ張りバイキンマンの最後の防護壁なのだ。
アンパンマンは口調をわざとらしく明るくして、バイキンマンに脅しをかけた。
「僕にこんなことをして普通ならお仕置きだよ?丁度ロープあるし、何かとあるしね。僕の気が変わらないうちにさっさと足開いた方が懸命じゃない?どうせ君一人じゃ勝ち目ないしさ」
「うぅ…」
けれど最終的にはそうやって受動的にアンパンマンの愛情(と呼べればの話だが)を受け入れていることに気づいていない。
バイキンマンは、泣きそうな顔になりながら体の力を抜いて、アンパンマンに身を寄せた。
「いい子だね、バイキンマン」
アンパンマンはバイキンマンの頬を撫ぜる。
そしてゆっくりと、丁重にバイキンマンの体をベッドの上に横たえ、肩や首筋を撫ぜ上げた。
(そういえば、こんなにバイキンマンがやる気なのって初めてかも…)
背中に手を回し、小さな羽根の付け根をくすぐる。
バイキンマンは「ひぁっ」と小さく声を上げて身を捩った。
アンパンマンがくすくす笑うと、バイキンマンは「なんだよ!」恥ずかしそうに怒鳴った。
(今まで我慢セックスだったんだろうな…)
アンパンマンは手早く自分の服を脱ぎ去り、ぽいっとベッドの傍らに放り投げる。
「…れ?アンパンマンなんで服脱ぐ…」
バイキンマンが何か言ったが、アンパンマンは敢えてそれを無視してバイキンマンの太腿に手を当てた。
白くてきめ細かい肌の質感を楽しんでから、親指にぐいっと力を入れてバイキンマンの足を開かせる。
バイキンマンの恥部が光の差し込む明るい部屋の中で、アンパンマンの目の前に晒された。
「ちゃんと、ゆっくり慣らすから」
アンパンマンは、バイキンマンの反応を確認するようにそろりと奥の窄まりに指を進める。
「…ぁっ」
入れられると思ったバイキンマンは恐怖を感じ、咄嗟に体に不自然な力が入った。
だが、アンパンマンはいつものように強引に指を進めるようなことはせず、バイキンマンを安心させるような笑顔を返し、バイキンマンの足の間に顔を埋める。
「え…?あ、やめ…!だめっ、だめぇ!そんなとこ…っ!」
突然秘部に感じる、暖かくて濡れた舌先。
ぴちゃぴちゃと音を立てて舐められるそこ。
バイキンマンはあまりの羞恥にどうかなってしまいそうだった。
「ひぅ…や!…やだぁ…やんっ!」
腰を揺らして逃げようとしていたら、アンパンマンに気づかれ前を握られてしまい悲鳴を上げる。
前をやんわりと握られ、ゆっくりと前戯をされてバイキンマンの花芯はとろとろと蜜を零し始めた。
前と後ろの慣れない緩やかな刺激にバイキンマンは終わりの無い快楽を見る。
「指、入れるよ?」
十分に湿らされた蕾の入り口を、アンパンマンの指がつんつんと突付いた。
それだけでバイキンマンの蕾はきゅっとひくついて、可愛らしい反応を示す。
「うぁ…く、あ」
くちゅ…と粘着質な音がして、アンパンマンの指がバイキンマンの中に侵入してきた。
覚えのある異物感に、バイキンマンは下腹部を震わせる。
「どんな感じ?」
アンパンマンがゆるゆると抜き差しを開始した。
細いがバイキンマンにとって十分質量のある指が、バイキンマンの内部を行ったりきたりする。
はじめは気持ち悪い感じの方が強かったが、指先がバイキンマンの中のある一点を掠めたとき、バイキンマンがびくんと反応を示した。
「二本に増やすよ?」
ぐちゅ、という音がして、下腹部の圧迫感が増えた。
バイキンマンは己を外の世界から遮断するようにぎゅっと目を瞑る。
けれど、そうすればかえって生々しい音が耳にこびりついてバイキンマンは改めて内部を指で犯されているのだと悟った。
くち…、と音がして、二本の指で入り口を開かされているのが分かる。
アンパンマンが中を覗きこんでいるのが分かる。
視線だけでバイキンマンは感じてしまう。
「痛くないよね?」
その問いにバイキンマンは頷いた。
「ほんとに?」
アンパンマンが、いつのまにかバイキンマンの頬に流れていた涙を舌先で掬う。
バイキンマンは無言で早くこの行為が終わるのを待っていた。
「ほら、バイキンマン、こっち見て」
言葉を返さないバイキンマンをアンパンマンがどう思ったのか、バイキンマンには分からないけれど瞼を開くとアンパンマンの顔が目の前にあった。
「お互いの顔が見れるだろ?」
確かに、向かい合うような形で体は密着しているが。
「嫌だ。俺様の顔変だもん」
バイキンマンはそっぽを向いた。アンパンマンがため息をついたのが分かった。
何故か、バイキンマンは悲しくなってしまった。
アンパンマンの意図が見えなかった。
目を瞑っているため、今アンパンマンがどんな顔をしているのか分からない。
分からないからなおさら怖かった。
「…愛してるよ」
おざなりのキスをされて、バイキンマンは足の間にアンパンマンの熱いものを感じた。
「…ひ!いぅぅ…っ」
どんなに慣らしても、挿入するときは苦痛を伴う。
バイキンマンが歯をくいしばって耐えていると、アンパンマンがバイキンマンの花芯に手を伸ばした。
「いあぁぁっ」
ぎゅ、と握り込まれて先端をくりくりと弄られる。
苦痛と快楽が混ざり合って、バイキンマンは翻弄された。
「バイキンマンの中、やっぱりきついね」
アンパンマンは苦笑まじりにそう言い、おもむろにバイキンマンの胸の突起を口に咥えた。
「やぅっ!」
アンパンマンは右手でバイキンマンの腰を支え、左手で彼の前を嬲り、舌でコロコロと小さな突起を弄ぶ。
そうしてバイキンマンの苦痛を快楽に変えてやっているうちに、アンパンマンのものはバイキンマンの中に納まった。
「あ…あぁ…っ」
バイキンマンは目を見開いて自分とアンパンマンが繋がっているところを凝視している。
アンパンマンはくすりと笑ってバイキンマンの花芯の先端を弾いた。
鋭い悲鳴が上がる。
「このままずっとこうしていようか…?」
「…ぃ、いゃ…っ。あっ…」
バイキンマンはふるふると首を振る。
その彼の額にキスをして、アンパンマンはゆっくりと腰をひいた。
「あっ!あぁぁ―――っ」
ずるずると抜き出されていく感じがバイキンマンを襲う。
入り口のギリギリのところまで引かれると、熱くて太い杭はまたゆっくりと内部に戻ってきた。
「や――っ!」
バイキンマンの先端からとろとろと蜜が溢れ流れる。
一度奥まで入ってしまうと、バイキンマンの入り口は彼の意思とは無関係に、もう逃がしたくないというわんばかりにアンパンマンをきつく締め付けた。
「バイキンマン、辛い?激しい方がいい?」
もう解放を望んで張り詰めているバイキンマンの花芯を指先で弄りながら、アンパンマンは優しく問う。
バイキンマンはどう答えたらいいか分からなくて、泣きながらアンパンマンの名前を呼んだ。
「一緒に気持ちよくなろうね」
バイキンマンはわけもわからずに頷いてしまう。アンパンマンは苦笑してバイキンマンを抱きしめた。
「あぁぁ――っ!!やぁぁ――っ!!」
ぐちゅぐちゅと下から卑猥な水音がする。安物のベッドはぎしぎしと二人分の体重で激しく軋んだ
アンパンマンがバイキンマンの奥を穿つ度に、バイキンマンの先端からは白濁の液が面白いほど溢れ出る。
勢いのない吐精は、バイキンマンに永遠とも思える快楽を与えた。
バイキンマンの腹とアンパンマンの腹は、バイキンマンの精液で濡れ、汚れていた。
「イキすぎ」
アンパンマンが口の端を歪めて笑い、バイキンマンの根元を戒める。
芯の途中まできていた白濁の液がぴゅっと外に溢れ、アンパンマンの腹を汚した。
「ひゃ!や!離してぇ!」
根元を握り込まれてイクにいけなくなったバイキンマンはぽろぽろ涙を零してアンパンマンに訴える。
けれどアンパンマンはバイキンマンにキスをし、口を塞いで大きく腰を上下させた。
「―――っ!!」
声にならない叫びがバイキンマンの喉から聞こえ、手足がびくんと痙攣する。
「まだまだだからね」
その言葉を理解する間もないまま、バイキンマンは体の奥のいい所をアンパンマンの怒涛で抉られ絶叫した。
と、同時にアンパンマンがバイキンマンの根元から指を離し、溜まっていたミルクが一斉に溢れ出てくる。
「やぁぁぁ――っ!」
嵐みたいな快楽の波に、バイキンマンは耐えられなくなってアンパンマンの背に爪を立ててのけぞった。
「…く、バイキンマン、いくよ」
ぎゅうぎゅう締め付けてくる熱いバイキンマンの中を掻き混ぜながら、アンパンマンはもう一度大きくバイキンマンの中を穿つ。
「あぁぁぁ――!!」
すでに全ての精液を吐ききったしまったバイキンマンは、先端から透明な液を吐き出した。
「…っ」
「…ぁ、ぅ」
バイキンマンは体内にアンパンマンの熱い液を注ぎ込まれるのを感じた。
「…う」
「どう?気持ちよかった?」
どうにか意識を保っていられたバイキンマンは、少々青ざめながらベッドに沈み込んでいた。
まだ浅く早い呼吸を繰り返して、なんとか体を楽な状態にしようと頑張っている。それなのに
「気持ちよくなかった?」
無神経なアンパンマンときたら、バイキンマンの胸の突起を弄りながら気まぐれにバイキンマンの先端に爪を立てる。
まるで「良かったと言え」と脅しているかのように。
アンパンマンにとってはただの悪戯も、バイキンマンにとっては虐められているとしか受け取れないこともある。
「…ふ」
バイキンマンは悲しくなって涙を零した。どうしてこんなことになるのだろうと思った。
情緒不安定なのは分かっていた。
けれどもやっぱり涙を止めることは出来なかった。
「バイキンマン?ごめん、やっぱり辛かったかな…」
こうやって、アンパンマンに頭を撫ぜられるのも、自分が全て悪いみたいで辛かった。
そのうちアンパンマンが怒ってどこかに行ってしまうのではないかという錯覚に襲われた。
「どこか痛い?」
アンパンマンの問いに、バイキンマンは首を横に振る。痛くは、なかった。
快感の方が何倍も多かった。
そのことをアンパンマンにつっかえつっかえ話すと
「バイキンマンは、気持ちいいと泣くの?」
そんなことを聞かれた。バイキンマンは「分からない」と言って首を振った。
「気持ちよければそれでいいじゃない」
アンパンマンは飄々と言ってのけた。
バイキンマンはますます悲しくなってしゃくり上げた。
まるで気持ちよくなるためだけにアンパンマンは自分といるみたいだと思った。
が、ふと思いつき
(…実際そうだろ)
自嘲的に笑った。
「でも、痛いより気持ちいい方がいいよね?」
怪我したなら、治療してあげようか。
アンパンマンは多少焦っているのがバイキンマンには分かった。
それからもっともっと困らせてやりたいと思った。
だって初めの趣旨はそれなんだから。
「今、痛いのはこっち…」
バイキンマンは、アンパンマンの手を取り、自分の胸の真ん中に押し当てた。
アンパンマンは驚いてバイキンマンの顔をまじまじと見る。
「ココが痛い」
それは、昔ドキンちゃんがバイキンマンに教えた場所。
『体が傷ついたらね、お薬を塗ればいいでしょ?』
『うん』
『でもね、ココはお薬じゃ治らないのよ』
『じゃあ、どうするの?』
そしたら、ドキンちゃんは何て言ったっけ。
バイキンマンには思い出せない。
ただ、ドキンちゃんの少し大人びたような、悲しそうな顔が印象的だった。
アンパンマンはどうするだろう。
バイキンマンは、ちょっと期待しながらアンパンマンの方を見た。すると
「バイキンマン、見える?」
アンパンマンはにっこり笑って、自分の小指を突き出した。
「何が」
そこにあるのはただの小指。
バイキンマンは何だろうと思ってじっとその小指を見ていた。
するとアンパンマンはバイキンマンの手もとり、バイキンマンの目の前に並べて嬉しそうに言う。
「赤い糸」
「は」
「運命の赤い糸」
「…お前、だってそれは…」
バイキンマンはアンパンマンが突然言い出したことに困惑した。
「でも、君は僕を倒すためにいるんだろ?で、僕は君を倒すためにいる」
「…」
「これは立派な赤い糸だと思うよ」
アンパンマンの優しげな笑みに、バイキンマンは何故かむかついた。
「思わない」
ぷい、とそっぽを向いてそうはき捨てた。
「思う」
「思わない」
「思う」
「思わない!」
意地を張り続けるバイキンマンと、それを屈伏させようとするアンパンマン。二人はしばらく睨み合っていた。
けれど、不意にアンパンマンの顔が緩んでいつも通りの好青年きどりの表情に戻る。
「ほら、泣きやんだ。もう痛くないでしょ?ココ」
確かに。もうバイキンマンの涙は止まっていた。
でもなんだか騙されたような気がして、バイキンマンは「うぅ」と唸る。
結局、今回アンパンマンをぎゃふんと言わすことが出来なかった上に(バイキンマンの手でイかせられていないから)、しっかり食べられてしまった。
さらに泣くのも宥められ、アンパンマンには何一つダメージを与えられていない。すると
「困ったな…」
アンパンマンが本当に困ったように呟いた。
「む、俺様何もしてないぞ」
「バイキンマンが可愛すぎて困ってるんだよ」
アンパンマンは、両手でバイキンマンの頬を包み、瞳を覗き込みながら愛おしそうに呟く
「なんだよそれ!!」
「あはは。ごめんバイキンマン。またちょっと勃ってきた」
「…え?えぇぇっ!?」
「もう一回…二回かな?…しよう」
「はっ!?ちょ、無理!!やだ!あ、こら!!ギャー!!」
そろそろ本気で復讐を企むバイキンマンだった。
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